負担付遺贈とは?トラブル事例と放棄の方法も解説

負担付遺贈とは?トラブル事例と放棄の方法も解説


目次

財産をもらう代わりに「義務」を負う?負担付遺贈とは

遺言書の中には、「自宅を長女に遺贈する。ただし、母の介護をすること」といった条件つきの記載がされていることがあります。

こうした内容を「負担付遺贈(ふたんつきいぞう)」といいます。

負担付遺贈は、遺贈によって財産を取得する代わりに、一定の義務を果たすことを求められる遺言内容です。

この記事では、負担付遺贈の基礎知識、実際にあった精神的負担による放棄のケース、放棄の可否と方法、起こりやすいトラブルについて、わかりやすく解説します。


負担付遺贈とは?基本を整理

負担付遺贈とは、遺言によって財産を譲り渡す代わりに、「何かしらの義務を果たすこと」を条件とする遺贈です。

たとえば次のようなものがあります。

  • 長男に自宅を遺贈。ただし、母の介護をすること
  • 孫に預金1000万円を遺贈。ただし、弟たちに200万円ずつ配ること
  • 長女に仏壇と墓の管理を任せることを条件に遺贈する
  • NPO法人に土地を遺贈。ただし、福祉施設として活用すること

一見、被相続人の希望に沿った柔軟な相続手続きのように思えますが、「義務」が加わる分、トラブルや放棄の原因にもなり得ます。


精神的負担が大きく、放棄に至った事例

【事例】絶縁状態だった親からの負担付遺贈を放棄

被相続人である父の遺言には、「長女に自宅を遺贈する。ただし、仏壇と墓の管理を任せること」と明記されていました。

しかし長女は、生前の父との関係が非常に悪く、20年以上会話も連絡もないまま絶縁状態。葬儀にも参加しないつもりだったほどです。

たとえ不動産という財産がついてくるとはいえ、「遺言に従って仏壇の世話や法要の主催をする」ことに強い精神的抵抗があり、結果として長女は遺贈を放棄しました。

遺産は他の兄弟で話し合い、仏壇は父と同居していた次男が引き取ることに。

→ 財産価値のある遺贈であっても、「気持ちの整理がつかない」「義務の内容が精神的に重すぎる」場合、放棄という選択が現実的になるケースもあります。


遺贈は放棄できる?特定遺贈と包括遺贈で異なる点

受遺者(遺贈を受ける人)は、内容にかかわらず遺贈を放棄することが可能です。
ただし、遺贈の種類によって放棄方法が異なる点に注意が必要です。

▼ 特定遺贈の場合(例:土地や預金など、具体的な財産)

  • 放棄は受遺者の意思表示(口頭や書面)で可能です
  • 家庭裁判所への申述は不要です
  • 相続人とは別の扱いなので、相続放棄と混同しないようにしましょう

▼ 包括遺贈の場合(例:全財産の3分の1など、割合で遺贈)

  • 包括受遺者は、法律上相続人と同じ立場とされます
  • 放棄には家庭裁判所への「相続放棄」の申述が必要です
  • 相続開始を知ったときから3か月以内に手続きを行わなければなりません

放棄すると、負担も消える

民法第990条では、「負担付遺贈の受遺者が遺贈を放棄したときは、その負担も消滅する」と明記されています。

つまり、精神的・物理的にその負担を引き受けるのが難しい場合、放棄すればその義務からも解放されるということです。


負担付遺贈で起こりやすいトラブル

1. 義務の内容が曖昧で判断に迷う

「母の面倒を見ること」といった表現は、人によって解釈が異なり、どこまでが“面倒”なのか明確ではありません。

トラブルを避けるには、具体的に“どのような負担”を求めるのか、遺言に明記する必要があります。


2. 家族・親族間の誤解や軋轢

「遺贈を受ける代わりに○○する」という内容は、他の相続人から不満が出やすい要素です。
「私たちには財産がなく、あの人だけもらって、しかも世話を任されて当然だなんて」と揉め事になることも。

あらかじめ遺言に付言事項で意図を説明しておくと、感情的対立を減らす効果が期待できます。


まとめ|無理のある条件なら放棄も選択肢の一つ

負担付遺贈は、財産と引き換えに義務を果たす遺贈の方法です。

いかにも被相続人の想いがこもっているように見えますが、受け取る側にとっては、経済的・精神的に重すぎる負担となる場合もあります。

もし内容に疑問がある場合は、

  • 負担の具体的な内容を確認する
  • 遺贈の種類(特定か包括か)を確認する
  • 放棄するかどうかを冷静に判断する

といった対応が必要です。

負担のある遺贈は、義務を履行する覚悟がなければ受け取るべきではありません。
悩んだときは、専門家(行政書士・司法書士・弁護士など)に相談して、自分にとって最善の選択を見極めましょう。

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