公正証書を活用した延命治療拒否の意思表示

目次

延命治療拒否の意思表示とは

医療技術の発達により、人工呼吸器や点滴、胃ろうなどで生命を維持できるケースが増えています。
一方で「延命治療は望まない」「自然な最期を迎えたい」と考える人も少なくありません。

しかし、その意思を家族や医療機関に口頭で伝えていても、いざというときには伝わらず、結果として本人の希望に反した医療が行われることがあります。

そのため、延命治療を望まない意思を法的に明確化する手段として「尊厳死宣言公正証書」の作成が注目されています。

尊厳死宣言公正証書とは

尊厳死宣言公正証書とは、公証役場で作成する延命治療拒否の意思表示を記録した公正証書です。

本人が「回復の見込みがなく、死期が迫ったときには延命治療を行わないでほしい」と意思を表明し、公証人がその内容を確認して証書を作成します。

この公正証書を作成しておくことで、家族や医療機関が本人の意思を尊重しやすくなり、無用なトラブルを避けられます。

作成の流れ

尊厳死宣言公正証書の作成は、次の流れで行われます。

  1. 公証役場に相談し、必要書類(本人確認書類、印鑑など)を準備する
  2. 公証人と内容を打ち合わせ、「どのような状態で延命治療を拒否するのか」を明記する
  3. 本人が署名・押印し、公証人が認証する
  4. 作成後は本人に交付され、原本は公証役場で保管される

メリット

1. 本人の意思を法的に明確化できる

口頭で「延命治療は不要」と伝えていても、いざというときに家族が迷い、医療現場が判断できないケースは多いです。
公正証書で意思を示しておけば、本人の意思を尊重する根拠になります。

2. 家族の心理的負担を軽減できる

延命治療を行うかどうかの決断は、家族にとって非常に重いものです。
尊厳死宣言公正証書があれば、「本人がこう望んでいた」と伝えられるため、家族が葛藤を抱えることを減らせます。

3. 医療現場でのトラブルを防げる

医師にとっても、患者本人の明確な意思が書面で存在することは判断材料になります。
結果として、医療現場での混乱や訴訟リスクを避ける効果も期待できます。

注意点

1. 法律上の絶対的拘束力はない

日本には「尊厳死法」が存在しないため、公正証書があっても医師に延命治療の中止を強制できるわけではありません。
あくまで本人の意思を尊重してもらうための強力な資料と位置づけられます。

2. 家族への事前説明が大切

せっかく公正証書を作っても、家族が知らなければ意味がありません。
また、突然「延命治療は拒否するから」と一方的に示すと、家族が動揺することもあります。
事前に「私は自然な最期を望んでいる」という考えを冷静に説明して共有しておくことが大切です。

3. 状況に応じて見直しが必要

健康状態や価値観は変化するものです。
一度作成したら終わりではなく、数年ごとに内容を確認し、必要に応じて再作成しましょう。

具体例

例1:延命治療を避けたい70代男性

70代のAさんは、がんの手術経験をきっかけに「延命治療を望まない」と考えるようになりました。
家族に伝えたものの「そんな話しないで」と避けられてしまい、公証役場で尊厳死宣言公正証書を作成。
後日、容体が急変した際に証書が提示され、家族は本人の意思を尊重して自然な最期を迎えることができました。

例2:家族の負担を軽減した80代女性

80代のBさんは、一人息子に「延命治療をどうするか決めさせたくない」と考え、公証人と相談して尊厳死宣言公正証書を作成。
数年後、Bさんが倒れたときに医師から「延命治療を行いますか」と息子に確認がありましたが、証書を提示することで即座に判断でき、息子は「母の意思を尊重できた」と安心しました。

専門家に相談することも大切です

尊厳死宣言公正証書は、公証役場で作成できるものですが、文章の内容をどう書けばよいか、どの範囲まで意思を表すべきかで悩む方も少なくありません。

「どんな状況を想定して延命治療を拒否するのか」
「家族にどう伝えれば誤解がないか」

こうした点を整理するには、専門家のサポートが役立ちます。

行政書士は、本人の意思を丁寧にヒアリングし、それを法律的にわかりやすい文章にまとめるお手伝いができます。さらに、公証役場での手続きに必要な書類の準備や流れの説明もしてくれるため、安心して作成を進められます。

大切な人生の最終局面に関わる意思表示だからこそ、一人で悩まず、専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

延命治療を拒否する意思を明確にするには、尊厳死宣言公正証書の作成が有効です。

  • 本人の意思を明確に残せる
  • 家族の心理的負担を軽減できる
  • 医療現場の判断を助けられる

ただし、法律上の強制力はなく、家族への事前説明や内容の見直しも必要です。

「自分の望む最期を迎えるために、今から準備できること」──その一つが尊厳死宣言公正証書です。
大切な家族に負担を残さないためにも、早めに考えてみる価値があります。

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