特別受益にあたる生前贈与の持ち戻しは10年|具体例でわかるルールと注意点

特別受益にあたる生前贈与の持ち戻しは10年|具体例でわかるルールと注意点


目次

「生前にもらった分、相続で差し引かれる?」それが特別受益の考え方

相続の場面でよくあるトラブルのひとつが、「生前に親から多く援助された兄弟がいるのに、それを考慮せずに財産を平等に分けようとする」というものです。

こうした不公平を防ぐため、民法には「特別受益(とくべつじゅえき)」という制度があります。

さらに、2023年の民法改正により、生前贈与の持ち戻し期間が“10年”と明確に制限されるようになりました。

今回は、制度の仕組みや注意点、そして具体例を交えてわかりやすく解説します。


特別受益とは?

特別受益とは、相続人のうちの一部が、生前に被相続人から受け取った特別な贈与や援助のことです。

たとえば、以下のようなケースが特別受益に該当する可能性があります:

  • 結婚の際に数百万円の援助を受けた
  • 自宅購入のための頭金をもらった
  • 開業資金として大きな贈与を受けた
  • 1人だけ多額の学費を負担してもらった

これらの「生前にもらった財産」は、相続時に持ち戻し計算が行われ、遺産全体からその分を引いたうえで、残りを相続人全体で分配する形になります。


【2023年改正】持ち戻し期間は10年に限定

従来、持ち戻しの期間に明確な制限はありませんでしたが、2023年の民法改正によって、特別受益にあたる生前贈与の持ち戻し対象期間は「相続開始前10年以内」と明文化されました。

つまり:

  • 10年以内に受けた生前贈与 → 持ち戻しの対象
  • 10年を超えている贈与 → 原則として対象外(ただし例外あり)

ただし注意!

  • 婚姻・養子縁組・生計の資本としての贈与に限定されます
  • 日常的な生活費やちょっとしたお祝い金などは対象外です
  • 10年を過ぎていても、遺言で「持ち戻すように」と書かれていれば対象になります

【具体例①】住宅購入資金を受け取った長男

母が亡くなり、相続人は長男・次男・長女の3人。
相続財産は3,000万円の預金のみ。

長男は、母から5年前に「自宅購入の頭金として500万円」の贈与を受けていました。

この場合:

  • 特別受益(住宅資金)=500万円
  • 相続財産3,000万円に500万円を加えて、「相続財産は3,500万円」とみなして按分
  • 各相続人の取り分=3,500万円 ÷ 3人 = 約1,166万円
  • 長男はすでに500万円もらっているので、今回の分配額は(1,166万円 − 500万円)=約666万円

→ このように、生前贈与がある人は相続時にその分を差し引かれて分配されます。


【具体例②】15年前の結婚祝いは対象外?

父が亡くなり、相続人は長女・次女の2人。
父は長女の結婚時(15年前)に300万円を祝い金として贈与。
相続財産は預金2,000万円。

この場合:

  • 祝い金は「婚姻のための贈与」にあたる
  • しかし、15年前の贈与なので「10年を超えている」
  • 父の遺言にも「長女の祝い金は考慮しない」と明記されている

→ このケースでは、祝い金の持ち戻しはされず、2人で1,000万円ずつの均等分割になります。


トラブルを防ぐために必要な3つの対策

① 生前贈与の記録を残す

「いつ、誰に、何のために、いくら贈与したか」を明文化しておくことで、
相続時に他の相続人と揉めるのを防げます。通帳の振込履歴やメモでも構いません。

② 遺言で明確に意思を示す

「○○への贈与は特別受益とみなさない」
「贈与はすべて持ち戻す」など、遺言に記載しておけば、持ち戻しの有無を本人の意思でコントロールできます。

③ 家族間で事前に情報共有する

事前にある程度、贈与の存在を家族で共有しておくと、「初耳だ!不公平だ!」という感情的な反発を減らすことができます。


まとめ|特別受益は10年以内がルール。ただし例外もある

特別受益制度は、相続における公平性を保つための重要なルールです。
2023年の改正により、婚姻・養子縁組・生計資本のための贈与は「10年以内」であれば持ち戻しの対象となりました。

ただし、10年を超える贈与であっても、遺言や合意があれば対象にすることも可能です。

「昔もらったけど、どう扱われるのか不安」
「相続時に兄弟と揉めたくない」

そんな方は、早めに専門家に相談し、自分の状況に合った対策を立てておくことをおすすめします。


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