50代からの相続準備|親の遺言書作成

「うちの親は元気だし、まだ遺言なんて早いよな…」
そう思っていても、ある日突然やってくるのが“相続”の現実です。
だからこそ、親が元気な今、少しずつ相続や遺言の話をしておくことが、後の安心とスムーズな手続きにつながります。

この記事では、親に遺言書を書いてもらったほうがよい理由と、その伝え方・注意点・公正証書遺言を勧める理由について解説します。


目次

なぜ、親に遺言書を書いてもらうべきなのか?

親が亡くなったあと、相続人(通常は配偶者や子どもたち)で遺産をどう分けるか話し合う必要があります。
このとき、親の「意思」が残されていないと、家族間でトラブルが起きやすくなるのが現実です。

実際に起こるトラブル例

  • 「長男が家を継ぐと思ってたのに」
  • 「介護してた私が少なすぎる」
  • 「疎遠だった兄弟が突然口を出してきた」
  • 「通帳や土地の名義がどうなっているかわからない」

遺言書があれば、親の意志が明確に残り、家族間の不信感を防ぎやすくなります
親が元気なうちに遺言書を作ってもらうことで、相続手続きはぐっとスムーズになります。


遺言書の基本|種類と特徴

遺言書には主に2種類あります。それぞれの特徴を押さえておきましょう。

自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)

  • 親が自筆で作成するもの(全文を自分で書く必要あり)
  • 2020年から法務局での保管制度が始まり、保管すれば検認不要
  • 無料で作れるが、書式不備によって無効になるケースも

メリット:手軽で費用がかからない
⚠️ 注意点:形式の不備、紛失、勝手に破棄されるリスクがある

公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)

  • 親が内容を公証人に伝え、公証役場で正式に作成する
  • 原本は公証役場に保管され、紛失や改ざんのリスクなし
  • 費用は財産の内容や人数によって数万円〜十数万円

メリット:法的に確実で無効になるリスクがほとんどない
⚠️ 注意点:作成には手間と費用がかかる


なぜ公正証書遺言がオススメなのか?

遺言書を作成するときには、公正証書遺言をおすすめするケースが多いです。以下がその主な理由です。

① 無効になる心配がほとんどない

自筆証書遺言は、書き方を間違えると無効になります。
一方で公正証書遺言は、法律の専門家(公証人)がその場でチェックしながら作成されるため、安心です。

② 原本が安全に保管される

公正証書遺言は、公証役場で原本が保管されるため、紛失や改ざん、隠蔽のリスクがありません

③ 家族全体が安心できる

子ども世代からすると、「あとで揉めたらどうしよう…」という不安がつきものです。
公正証書遺言があれば、「わざわざ公正証書の形で遺言を残した」という親の明確な意思が形になっているので、兄弟間でも納得が得られやすいのです。

④ 手続きがスムーズになる

遺言があると、遺産分割協議が不要になったり、金融機関での相続手続きが迅速になります。
つまり、親の死後の事務処理の負担が大きく減るのです。


親に遺言の話をどう切り出すか?

「遺言書を書いて」と言い出すのは難しいもの。
時期を見計らうのが大事ですが。タイミングや言い方の工夫をご紹介します。

スムーズな切り出し方のコツ

  • 自分も終活の話を始めていると伝えてから話を振る
  • 「家族に迷惑をかけたくないってよく聞くけど…」と一般論から入る
  • 「最近こういう本読んだよ」と本やニュースを話題にして会話の入口にする

よくある親の反応と対処法

  • 「まだ元気だし、必要ないよ」→「元気なうちだからこそ準備しておけるんだよ」
  • 「そんなの縁起でもない」→「確かに。でも、後の人が困らないようにね」
  • 「子どもたちに任せればいい」→「残された人の負担が大きいからこそ、意志を残してほしいんだ」

自分の遺言も意識してみる

この記事をきっかけに、自分自身の将来の準備も考えてみませんか?
「親の遺言の話をきっかけに、自分もエンディングノートを始めた」という方も多くいます。
50代は親の終活に向き合うタイミングであり、同時に自分の人生の次の段階の始まりでもあります。


まとめ|遺言は“家族を思う行動”のひとつ

親に遺言書を書いてもらうのは、決して財産のためだけではありません。
それは、家族の思いを大切にするための対話であり、準備です。

親が元気な今こそ、まずは話題にすることから始めてみましょう。

📌 今日からできる一歩

  • 親との昔話をきっかけに会話を広げる(「あの家って、いつ買ったんだっけ?」など、思い出話から自然に導入すると、実家や将来の話にもつなげやすくなります。相続の話題が重く感じられるときは、こうしたきっかけが効果的です。)
  • エンディングノートを自分で買ってみる(まずは自分用にエンディングノートを買ってみましょう。「自分も書いてみたんだけど、意外と役に立つよ。一緒にやってみない?」と親に見せれば、関心を持ってもらいやすくなります。)
  • 相続・遺言に関する無料セミナーを親に紹介する(自治体や地元の専門家が開催するセミナーは、第三者の話をきっかけにできる良いチャンスです。「こういうのあるけど行ってみない?」と軽く誘うと、話しやすい雰囲気を作れます。)
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