婚姻20年以上の夫婦間贈与と特例|居住用不動産をめぐる注意点と贈与契約書の重要性

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婚姻20年以上の夫婦間贈与と特例|居住用不動産をめぐる注意点と贈与契約書の重要性

「長年連れ添った配偶者に、住み慣れた家を贈りたい」
──そう考える方は少なくありません。

民法では、婚姻期間が20年以上の夫婦間で行われた居住用不動産の贈与や遺贈については、相続時に特別扱いされる“持戻し免除の特例”が用意されています。

この記事では、この特例の仕組みとともに、贈与契約書を作成することの重要性について、具体例を交えてわかりやすく解説します。


■ 婚姻20年以上の配偶者への贈与に関する特例とは?

相続が発生した際、被相続人が生前に相続人へ贈与していた財産は、原則として「特別受益」として扱われ、遺産分割や遺留分の計算時に“持戻し”の対象になります。

しかし、夫婦間で以下の条件を満たす贈与・遺贈については、持戻しの対象から除外できます。

【対象となる条件】

  • 婚姻期間が20年以上
  • 配偶者への居住用不動産または居住用不動産取得資金の贈与または遺贈
  • 被相続人の意思により「持戻し免除」の意思表示がされている

この特例により、長年支え合ってきた配偶者が、相続時に他の相続人と争わずに居住を継続できるよう配慮されています。


■ 事例①:同居していた妻に自宅を贈与したケース

Aさん(夫・75歳)は、生前に妻Bさん(70歳)に自宅を贈与し、不動産登記の名義もBさんに変更しました。婚姻期間は50年、自宅は長年夫婦で暮らしてきた持ち家です。

Aさんが亡くなった際、他の相続人(長男と次男)が「自宅も遺産の一部だ」と主張。しかし、Bさんへの自宅の贈与は婚姻20年以上の配偶者間での居住用不動産贈与に該当し、持戻し免除の意思表示があれば、その分は遺産に加算されず、遺産分割協議から除外できます。


■ 事例②:遺言で妻に自宅を遺贈したケース

Cさん(夫・80歳)は、妻Dさんに「私が亡くなったら、この家をそのまま使ってほしい」という思いを込めて、遺言で自宅を遺贈しました。

遺言には「婚姻期間20年以上であるDに対する居住用不動産の遺贈は、持戻しを免除する」と記載。この意思表示により、Dさんは他の相続人と遺産分割をせずに、自宅の所有権を確保することができました。


■ 贈与契約書はなぜ必要? 4つのメリット

この制度を活用するには、法的に明確な形で贈与の意思を示すことが重要です。そこで有効なのが、贈与契約書の作成です。以下のようなメリットがあります。

1. 相続トラブルを防止できる

「生前に贈与を受けていたのだから、相続の際は他の遺産を減らして当然」と主張されることもありますが、贈与契約書があればいつ・誰に・何を贈与したかが明確です。
文書で証明できることで、不公平感によるトラブルを未然に防げます。

2. 贈与の履行を証明できる

贈与は口約束でも成立しますが、後になって「言った・言わない」で揉める可能性があります。
贈与契約書があれば、贈与が実際に行われたことの客観的証拠となり、当事者の記憶や感情に左右されることなく履行を主張できます。

3. 税務調査への備えになる

税務署は、相続時に預金の動きや名義変更を確認し、「これは贈与ではなく、相続財産だ」と判断することがあります。
贈与契約書があれば、贈与の意思と内容が明確に示されているため、贈与税や相続税の課税リスクや追徴課税を回避しやすくなります。

4. 不動産の名義変更(登記)がスムーズになる

贈与によって不動産の**所有権移転登記(名義変更)**を行う際、登記理由として「贈与」を証明する必要があります。
贈与契約書を添付すれば、登記申請がスムーズになり、登記官の審査にも安心して臨めます。


■ 注意点:名義変更だけでは不十分なことも

贈与の意思が明確であっても、「名義変更だけでは不安定な証拠」とされることがあります。
第三者から「名義は変わったが、実質的にはまだ贈与されていない」と指摘される恐れがあるため、贈与契約書の作成と登記のセットで手続きを行うのが安心です。


■ まとめ|「住み慣れた家」は思いやりで守る

婚姻期間が20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与や遺贈は、法的にも特別な配慮がされています。

ただし、制度を正しく活用するためには、適切な手続きと証拠の整備が不可欠です。

贈与契約書の作成や登記の準備をしておくことで、大切な配偶者に安心して家を残すことができます。
後悔のない相続のためにも、早めの準備をおすすめします。


必要に応じて、専門家によるサポートを受けながら進めていきましょう。

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